フランスにあって日本にはない「PACS(パックス)」という制度。
私自身も現在の夫と結婚する前はPACSをしていました。
今回はその経験談を交えつつ、PACSについて解説していきます。
PACS制度についておさらい
日本語では連帯市民協約と訳されるPACS。
フランス語のPacte Civil de Solidaritéを省略したもの。
性別に関係なく、二人の成人が共同生活を送るために交わされる契約のことを指します。
…何だかピンときませんよね。
日本ではフランス流の事実婚、と表現されることも少なくありません。
最近では「フランス婚」という表現をされることもありますね。
この制度、1999年からスタートしたのですが、当時同性婚が認められていなかった同性カップルのために制定されたもの。
共同生活を送るパートナーとPACSを交わすことで社会保障や税金の面でメリットがあるため、この制度を活用するカップルが増えたようです。
実際、結婚とPACSの件数を比べてみると
結婚件数は23万7千組、PACSは18万9千組(2015年:https://www.insee.fr/fr/statistiques/2569324?sommaire=2587886#tableau-T17F033G2)
あまり大きな差はないようですね。
現在では結婚同様、家族のカタチとして定着しているPACS。
なぜフランスではPACSをする人がたくさんいるのか、メリットとデメリットを詳しく見ていきましょう。
PACSのメリットとデメリット
メリット
・一般に手続きが結婚よりも簡単
PACSは必要書類を準備し、管轄の市役所または公証人に予約を取り、当日パートナーと一緒に手続きを行うだけ。
数年前に私がPACSした際にはその場で証明書を発行してもらえました。
しかし結婚となると証人が必要だったり結婚の公示をしなければならなかったりと手続きや準備がより煩雑です。
ただし、外国人がPACSをする際には必要書類が結婚とあまり変わらない場合も多く、書類集めが意外と大変かもしれません。
・PACS解消はどちらか片方の申し立てでOK
手軽に解消できるのがPACSのメリットの一つ。
しかもどちらか片方がPACS解消の申し立てをするだけで手続き可能です。
離婚の際は裁判所での手続きが必要になるフランス、簡単に契約を解消できるという点はPACSの大きなメリットかもしれませんね。
・社会保障や税金などに関して結婚と同様の権利が受けられる
結婚やPACSをしている世帯は単身世帯よりも税金や社会保障において有利になるようなシステムになっています。
・外国人がフランス人とPACSした場合、滞在許可証が下りる可能性がある
私自身もPACSをしたことでLa vie privée et familialeという滞在許可証を手に入れています。
PACSだけでは偽装結婚を疑われるため、1年以上の共同生活の証明などを求められることが多いようですね。
しかし結婚とは違い、PACSで滞在許可が下りるかどうかは流動的、担当にもよるらしいという噂を耳にしました。
申請を却下されたという話はあまり聞きませんが、PACSで滞在許可証を申請する予定の方は事前に調べておいた方が得策でしょう。
デメリット
・日本では馴染みがない
PACSを日本人に説明するのは結構難しいと思います。
制度そのものに馴染みがないうえ、海外まで行って一緒に生活しているのに結婚しないの?と不審がる人もいるかもしれません。
・日本の戸籍に反映されない
これは捉え方次第でメリットにもデメリットにもなり得ますが、PACSという制度は日本にないため戸籍上は変化なし。
また苗字を変えるということもありません。
自分に合ったカタチを見つけよう
PACS制度やそのメリット、デメリットを主観を交えながらご紹介しましたがいかがでしたか。
私たちはPACS期間を経て結婚をしましたが、人によってはPACSが無意味に思えたり、逆に結婚にメリットがないと感じることもあるでしょう。
二人の意見が食い違うこともあるかもしれませんが、そこはじっくりと話し合って自分たちに合ったカタチを見つけることが大切です。
今回のPACS制度についての記事が、現在フランス人と恋愛中の方、これからPACSや結婚について考えているという方の参考になれば幸いです。
参考:https://www.service-public.fr/particuliers/actualites/A11143