「この怒りをチャンスに」
そんな文字が大きく掲げられているエリゼ宮公式サイト。
トップページを飾るのははもちろん、昨日12月10日に行われたマクロン大統領の演説。
どのような内容だったのかをざっくり解説していきます。
暴力への批判と国民感情の理解
演説の冒頭では、今回のデモで見られた破壊行為や暴力に対して強く批判したマクロン大統領。
フランスの標語の一つでもある「Libertéリベルテ、自由」は暴力行為が行われた時点で失われるとも述べています。
このデモを利用して国の混乱を招こうとした政治家がいたことにも触れていますね。
国民が平和を案じている状態では何も生み出すことができないため、現状改善のために政府は全力を尽くす、とのこと。
また今回のデモ騒動の原因の一つには2018年に予定されていた増税への怒りがあり、増税案の取り消しを発表した今も続いていることからその怒りの深さがうかがえると言及しています。
しかしこの怒りはチャンスでもあるのだ、と。
毎日早朝から深夜まで働いても困窮状態の人々、子どもの預け先がなく生活の質を上げられずに希望を失ったシングルマザー、公共サービスが縮小された町、働き続けてやっと受け取れた年金では生きていくのに不十分で苦しむ定年退職者、まだ十分に社会的居場所が確保されていない障がい者…
フランスだけではなく、様々な国でも同じような苦しみにさらされている人が大勢いる中で、力を合わせて現状を打開できるはずだ、とマクロン大統領は述べています。
ここでマクロン大統領はフランスの経済、社会的非常事態を宣言しています。
経済措置
経済措置については箇条書きで見ていきましょう。
・月2000€以下の年金受給者にはCSG(Contribution Sociale Généralisée:一般社会拠出金、家族手当や国民健康保険に充てられる)の免除
・2019年の残業代非課税
・年末ボーナス非課税
・大統領選挙時の公約実行:最低賃金SMIC(Salaire minimum interprofessionnel de croissance)の月100€引上げ。在任期間中段階的に100€まで引き上げる予定だったものを今回一度に実行する。
また、フランスの大企業の取締役はフランスで税金を払うべき、大企業がフランスで得た利益はフランスで課税されるべきとの姿勢も見せています。
今後のフランスについて
選挙法の在り方や税制のバランス、環境問題、国家機関や公共サービス…
これらの問題は国に関わる不可欠なもので、国民みんなで考えていかなけらばならないと言及。
そのためにも現場の声を集めるため、様々な地域の市長たちと面談を行う方針も発表しています。
国民の反応
今回の大統領演説を受けて、早速ニュースはこの話題でもちきりに。
ニュース専門チャンネルのLCIではアンケート調査を行い、50%は今回の演説に納得のいかない様子。
それに対し納得できると回答したのは49%と意見も真っ二つに分かれています。
黄色いベスト運動を支持しますか?の質問には66%が支持、34%が支持しないと回答。
ところがデモを続けるべきか否かに関しては45%が継続すべきとの意見に対し、54%が「やめるべき」と答えています。
本文中でも触れましたが、元々は増税への反対が発端だった今回の黄色いベスト運動。
しかし徐々に他の目的でデモをする人々も増え、当然ながら今回の政策では満足していない方も多数います。
これまで数週に渡って行われてきたデモ活動、果たして今後も継続して行われるのか注目が集まっています。